2013年7月28日日曜日

「リーン・イン」シェリル・サンドバーグ(現FacebookCOO)著 〜席に着く勇気〜

笑顔がとてもチャーミング

IMFのラガルドさんに続き、パワフルな女性からまたメッセージか!と思いきや、意外に親近感の湧く内容でとても読み易かった。著者であるシェリルは恐らく私と同じ(1〜2歳差)バブルの申し子で「ウーマンリブは既に完了し、世の中平等になったんだ。」と信じて成人した世代だ。


実体験と綿密な裏付け情報(巻末に山と引用文献の索引が付いている!)で、今の「気持ち」を懸命に表した感じがとても好印象な本だった。
「きっとアメリカはもっと進んでいるに違いない。」
と思っていた私には、意外に日本と変わらないんだと判って、それが新鮮でもあった。


問題が無いふり
年収ラボより
一年前に見つけて、忘れられないショッキングなグラフがある。働いている人を男女別に10歳ごとに区切った平均年収のグラフだ。
見ての通り、日本の働く女性は、全年代に渡り、平均年収が300万を越えない。男性と急激に差がつきはじめるのが30代以降。これは女性の就労人口がM字型(出産適齢期になると離職して、育児が一段落した頃にまた働き始める)である事と密接に関わっている。一時お休みして再就労しても平均年収が男性の半分にしか満たない、、、即ち、ある一定の権限を持てる所までキャリアを進められていない事を物語っている。
「今さら」
と思わなくも無いが、事実を可視化されると、やはりインパクトがある。これまでは「女性が家事/育児/介護を担い、そこにかかるコストを男性が外で仕事をして稼ぐ。」が一般的なモデルだったのだから、グラフがこんな形になるのも当然で、倍以上ある男性の平均年収の半分は「妻」の物でもあるのだろう。(夫婦間での話ね)

でも、、と、どうしても思ってしまう。自らが稼いだという実感が無く「所有権」だけを主張する「お金」とはどんなものなのだろうか。。
私は、日本の多くの女性が「何かを学び損ねている。」のではないかと、最近強く思わずにいられない。その何かとは「社会性」とか「市場感覚」とか「権利と義務とのバランス感覚」とかそんなものかも知れないのだが、端的に言えば「真の大人になる」事なのだろう。
周囲からも、そして自らも率先して「幼い無垢」なままで眠っていたいと、頭から布団を被っている(被らざる終えない)ように思えてならないのだ。


テーブルに着こう
シェリルは、そんな女性の心理を時に鋭く、時に「自分もそんなに強く無いのだ。」と正直に心情を吐露しながら、語りかける。
特に、アメリカの「仕事が出来る男」は超肉食系なのか、ガンガン自己主張するのに比べ、どうしても女性達は能力は十分にあるのに自ら「一歩前へ踏み出す」事をためらいがちであると言う。
ルールをキチンと守り、自己研鑽を怠らず、周囲へ気遣いをして、与えられた以上の仕事をしても、それを「交渉ネタ」にディールするという積極性を出しにくい。
そんなに出しゃばると男性に「モテ」ない。
洋の東西を問わず、女心は変わらないんだなぁと、少し微笑ましくも思った。いや、むしろ「マッチョ」の総本山である欧米の方が、よりこの心理が強く働くのかも知れない。
日本の場合は
「母ちゃんの尻に敷かれてさ」とか「うちは女子が元気良くて」等と「かかあ天下」よろしく適当に祭り上げておいてその実、肝心な所を「カッさらう」
のが常套手段で、一途で懸命に働く女性達はしばしば、縁の下からなかなか出る事が出来無い。まして、子どもを産んでそれでも働き続けようと思うと、相当に頑張らないと「自分一人の努力ではいかんともしがたいハンデ(子どもが体調を崩すのを100%防げる母親はこの地球上に存在しないだろう)」を、「いつ突かれるか」とビクビクしながら懸命に職務を遂行するのが精一杯で、とても「ディールしよう」とまで思え無いのが現状だ。

でも、そこを「一歩踏み込んでテーブルに着こう」とシェリルはナッジ(肩をそっと押す)してくれる。周囲へも「彼女達をナッジしてあげて。」と理解を促すと同時に、女性達にも「勇気を持って積極性を出してみよう。」と語りかける。

  • キャリアは梯子でなくてジャングルジム
  • ティアラ症候群(真面目にキチンと仕事をしていたらいつか誰かがそれを認めて王冠を頭に被せてくれると期待する)
  • 自分を引き上げてくれるメンターを探し続けるのは「王子様」を探すのと同じだ 。(郡から引き上げてくれるメンターを探すのでは無く、自力で郡から抜け出られた時にメンターに出会えるのだ。)
 本当に耳が痛く、且つ鋭い指摘をしている。


対話を続けよう
この著書のいい所は、この一文で終わっている所だ。何か結論めいた事を言い切るのでは無く「これはきっかけに過ぎない、対話を続けよう。」と行動を促している。
さすが、そこはFacebookである。きちんとコミュニティが出来ている。
Lean Inコミュニティ
日本版があったらもっといいのにと思うけれど、きっとじきに出来るだろう。
数年後、「あれからどうなったかな。」とまた本書を振り返って読むだろうなと予感している。「ああ、こんな時代もあったね。」と思えるように、ほんの一ミリでもいいから努力しなくてはと思う。

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